媛小春(ひめこはる)
新しく仕込んでいる苗木の中に
「媛小春」という品種がある。
「清見」と「黄金柑」のかけ合わせで
愛媛県の果樹試験場から2008年に
品種登録となり県内各地で栽培が始まった。
おなじみ「愛媛果試28号(紅まどんな)」
「愛媛果試34号(甘平)」と共に、
愛媛県の新しいオリジナル中晩柑として
3種のうちの1種になる。
近々世に出回るだろう、「愛媛果試48号(紅プリンセス)」の
お披露目会の折にも48号を差し置いて試食の人気が高かった。
※48号が食するに最適期ではなかったこともあるが..
しかしこの品種は
この辺の農家さんでは少なからず敬遠される。
お味の方は実に気品のある独特な甘さで好評なのだが
果実が黄色ということで市場を主とする商売には
どうもウケが悪いらしい。
人間というのは得てして、
アシンメトリー性やギャップの存在に
強い魅力を感じてしまうことが多いと思われるが
「黄色は酸っぱい!」という先入観がまずある。
だからこそ「味は良いのだが果実の色が黄色だから売りにくい」
などというエクスキューズには??がつく。
幸いにして僕たちは食べる人達に直接お届けできる商売だから
むしろこの品種の個性を面白くアピールしてみたい。
また、この果実の心惹かれる大きな要素として
名前がいい!
「媛小春」ひめこはる。漢字の並びも素敵である。
愛媛果試28号は「紅まどんな」として知られているが
この商標はJAを通じて出荷したものだけに許可される。
麗しい日本語とはかけ離れた、この身も蓋もないネーミングとは
月とスッポンの差である。
(僕たちは「愛媛果試28号」という名で販売しているわけだが
商標を使えずに逆に良かったと思える。
ちなみに愛媛愛媛果試48号は「紅プリンセス」である。
競走馬ちゃうで..泣けるわw)
もう一つ敬遠される理由がある。
栽培過程での”超”がつく隔年結果性(果実がなる年、
全くならない年を交互に繰り返す特性)である。
つまり、つくりにくい品種だと言われている。
僕はここに慣行栽培とは何から何まで真逆の、
道法メソッドが炸裂するのではないかと
密かにシュミレーションを練っている。
小雨の降る中、芽かき作業に勤しんでいると
何故か山下達郎の「Dreaming Girl」が
頭の中で聞こえてきた。
とても楽しみである。
※果実画像は旬の果物百科さんより拝借